【線維筋痛症の問題点】
線維筋痛症は、検査しても異常がないことから、多くの患者は「詐病」「怠け病」と見られ辛い思いをしています。しかし、線維筋痛症は「怠けることができる人はならない」と言われています。また、身体障害者福祉法、障害者自立支援法による介護や援助を得られない傾向にあるため、多くの方々が苦慮しています。
線維筋痛症に悩んでいる方は女性の罹患率が多くなっており、女性にとっての結婚、妊娠、出産、家庭においてこの病気が障害となるのは明らかであり、少子化の一因となっている可能性もあります。最近では小児の患者も見つかっており、小児科医の認知が必要であると考えられます。また、不登校の一因にもなっていると推測されます。ただ、私が治療を試みている限りでは、確かに男性より女性の方が多くを占めていますが、結構男性の比率も多いように感じています。
原因が不明であり治療法が確立されていない。
欧米諸国では病院と製薬会社の連携の下に原因の解明と治療薬の開発が進められていますが、日本では病名も知られていないのが実状なのです。日本の学会においては分類法が未だ論争中であるため病名の認知が遅れています。また、どの科が受け入れるかも決まっていないのです。医師の間では線維筋痛症の知名度が低いことから、線維筋痛症に悩んでいる患者が線維筋痛症という病名を教えてくれる医師に会い、適切な治療を受けるまでに長い期間を経てしまうことが多く。その間に病状が悪化したり、検査料、投薬料、入院料などの医療費がかさんでしまうことがあります。
仮病や心気症的な振る舞い(注意をひいている)とされ精神科にまわされることが多くあり、診察を拒否する医師さえいるので、患者は診断を受けるために長期の間苦しむことになり、病気を難治化・長期化してしまっています。線維筋痛症は日本において保険診療報酬制度に入っていないため、保険適用外となっています。医者が随伴症状で保険を適用させているのが現状なのです。
厚生労働省において「線維筋痛症特別研究班」が設置されており、現在全国の患者数の調査を進めています。欧米諸国やアジア先進諸国では生活機能障害等の援助が実施されているにもかかわらず、日本での行政対応は遅れています。社会的認知度が低く、痛みを客観視する方法がなく、検査しても異常がないことから多くの患者は「詐病」「怠け病」とみなされ精神的苦痛が大きいため、必要以上に悩まされているのが実状なのです。
重度の患者の場合には寝たきりとなるため、働けず収入を得られず経済的に困窮することになり、多くの患者の生活の質や日常生活活動が著しく下がる傾向にあります。一説では患者の生活の質は日常生活活動がリウマチより低いとも言われているのです。この病気が、就職、勉学、結婚、妊娠、出産、家庭、友人関係などの大きな障害となっていることは紛れもない事実であり、早急に対策が必要と考えられます。慢性疲労症候群では日本国内においての経済的損失は、年間約一.二兆円と想定されていますが、それを参考として計算をした場合、線維筋痛症患者における経済的損失は、年間約十二兆円にもなることになります。
これまで、患者が痛みを訴えてもそれを具体的に伝えることは困難だったのですが、二〇〇七年に株式会社ニプロが「ペインビジョン」という電流知覚閾値検査装置を発売した。これは、痛みに似た感覚を作り出すことができる電気刺激を患者に与えることによって、患者の痛みを数値化し、グラフとして提供する装置です。この検査装置によって、これまで医師に伝えることが難しかった痛みの度合いが数値化・視覚化されることにより、患者が感じる痛みの量を患者と医師が共有したり、それによって患者の心理的負担が軽くなることなどが期待されるようになったのです。しかし、この装置を置いている病院はまだ少なく、フェイススケール(痛みによる表情の違い)等に頼っているのが現状なのです。
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